MMT講義ノート 貨幣の起源、主権国家の原点とは何か
[2022年5月/四六判/268頁/]
著=島倉 原
発行=白水社
目次:
まえがき
第一章 イントロダクション – なぜ、今MMTなのか
はじめに
経済学界におけるMMTの立ち位置
MMTはなぜ注目されているのか
日本はMMTの実証例?
第二章 貨幣とは何か – MMTの貨幣論
一 商品貨幣論と債権貨幣論 – 貨幣の本質をめぐる論争
貨幣の定義
主流派経済学は「商品貨幣論」
商品貨幣論は欠陥だらけ(その一)
商品貨幣論は欠陥だらけ(その二)
商品貨幣論は欠陥だらけ(その三)
MMTは「債権貨幣論」
銀行預金も債権貨幣 – 「貨幣創造」のメカニズム
主流派は外生的貨幣供給論、MMTと実務家は内生的貨幣供給論
二 表券主義 – 通貨の流通メカニズムとその起源
租税が貨幣を動かす – 通貨の本質は政府に対する債務の支払手段
租税が貨幣を動かした歴史的事例
表券主義とは何か
債務のピラミッド構造
表券主義に基づく債務ピラミッドの形成 – 英国の事例
表券主義の理論的基礎は非現実的?
貨幣と税の起源は神への供物
本源的債務論から公益的債権貨幣論へ
中世日本での渡来銭流通は表券主義の反証例?
渡来銭流通を説明する二つの表券主義メカニズム
コラム 民間銀行はなぜ預金を集めるのか
第三章 政府はなぜ財政破綻しないのか – MMTの通貨主権論
通貨主権と主権通貨
「税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない」は論理的な帰結
典型的な通貨主権国のオペレーション(その一) – 「国債は資金調達手段ではない」の実際
典型的な通貨主権国のオペレーション(その二) – 「税金は財源ではない」の実際
赤字財政支出は金利を引き下げる
「財政の持続可能性」は問題ではない
財政収支は赤字が正常
財政収支は非政府部門の貯蓄意欲と釣り合っている
ユーロ危機から何を読み取るべきか
第四章 政府は何をなすべきか – MMTの経済政策論
一 MMTの租税政策論
「MMT=無税国家論」はあり得ない
租税は実物資源を動員する手段
租税が達成すべき四つの目的
望ましくない三つの税
二 機能的財政論
完全就業と物価安定 – 政府が目指すべき公共目的
政府はなぜ完全就業を目指すべきなのか
機能的財政と二つのルール
表券主義から機能的財政論へ – MMTの原型を作ったラーナー
変動為替相場制以外での機能的財政
三 就業保証プログラム
自動安定装置 対 裁量的財政政策
就業保証プログラムとは何か
就業保証プログラムの三つの意義
ベーシック・インカムや最低賃金制度などとの違い
就業保証プログラムの問題点
就業保証プログラムの「実例」への違和感
MMT主唱者も裁量的財政政策に軸足を置きつつある?
第五章 何が長期停滞の原因か – MMTで読み解く日本経済
日本経済に関する二つのテーマ
政府債務をめぐるケルトン= クルーグマン論争
現代の日本はMMTの「実証例」
財政赤字は「インフレの原因」ではなく「デフレ圧力の結果」
一九九七年度がターニングポイント
需要不足のスパイラルは今も続いている
企業の投資意欲低下がもたらした就業環境の悪化
需要不足以外の要因では長期停滞を説明できない
金融緩和か財政拡張か – 主流派経済学とMMTの対立
金融政策はほとんど無効
緊縮財政こそ長期停滞の真因
日本経済を抑圧する消費税増税
財政拡張トレンドに水を差したアベノミクス
長期停滞脱却の展望は開けつつある?
コラム 終戦直後のハイパーインフレはなぜ起きたのか
第六章 日本経済をどう立て直すべきか – MMTの応用と発展
本章における二つのテーマ
一 経済政策の基本方針はどうあるべきか
その一 財政拡張路線を強化し、公的支出を長期安定的に拡大する
その二 当面の目標は「デフレ脱却」や「インフレ率」ではなく、「需要不足の解消」そして「完全就業の達成」とする
その三 政府債務残高対GDP比を政策指標から除外する
その四 消費税は廃止または減税する
その五 公的年金保険料を引き下げ、マクロ経済スライドは廃止する
その六 財政支出の世代間配分を是正し、少子高齢化に歯止めをかける
その七 公共投資を安定的に拡大する
その八 過剰な金融緩和は徐々に解消する
二 経済の長期循環と投資の社会化
内生的景気循環論 – もう一つの非主流派理論
現実的なのは内生的景気循環論
乗数=加速度モデル – 乗数理論と内生的景気循環論の融合
国際金融循環としてのクズネッツ・サイクル
日本経済に多大な影響を及ぼすクズネッツ・サイクル
「投資の社会化」とは何か
コンドラチェフ・サイクルとスタグフレーションのメカニズム
商品スーパーサイクル – もう一つのインフレ要因
コンドラチェフ・サイクルによる不均衡をどう緩和するか
スタグフレーションを緩和するエネルギー政策
脱・緊縮を前提としたエネルギー政策の見直しを
あとがき