〈サラリーマン〉の文化史 あるいは「家族」と「安定」の近現代史
[2022年8月/A5/474頁/]
著=鈴木 貴宇 発行=青弓社
各時代の文学作品や漫画、映画、労働組合の文化活動はサラリーマンをどのように描いてきたのか。
目次:
はじめに
序 章 〈サラリーマン〉をめぐる言説
– あるいは、彼らはどこから来たのか
1 問題の設定と本書の構成
2 これまでの「サラリーマン」論 – 先行研究概説
3 サラリーマン表象からみる日本社会
4 「文化史」というアプローチの必要性とその意義
第1章 〈サラリーマン〉前史としての1870年代から1910年代
– 士族、立身出世主義、そして煩悶青年
1 没落士族と官吏たちのプライド – 「士族サラリーマン」と「洋装」の表象
2 立身出世主義と「スウィート・ホーム」 – 二葉亭四迷『浮雲』を例として
3 煩悶青年と「会社員」の出現 – 1910年(明治43年)前後の青年たちとその世代的特徴
第2章 ベル・エポックあるいは小市民のユートピア
– 「文化住宅」という装置と大正時代のサラリーマン
1 第1次世界大戦と日本資本主義の発達 – 大戦景気、東京駅の開業、成金たち
2 「洋服細民」たちのプライドと孤立 – 「時事漫画」に描かれたサラリーマンと組合の結成
3 夫婦であることの困難 – 岸田國士『紙風船』論
第3章 蒼白きインテリたち – モダンボーイ、マルクスボーイ、サラリーマン
1 関東大震災と加速するモダニズム – 堀辰雄の短篇小説を事例として
2 サラリーマンとモダンガールの恋 – 中村正常『女学生気質』のなかの女たち
3 青空と自殺 – 浅原六朗『或る自殺階級者』と「煙突男」事件
第4章 戦後民主主義の恋愛 – 敗戦後のサラリーマンたち
1 廃墟と占領下の風景 – プランゲ文庫所蔵写真資料を中心に
2 「忘却」の記憶 – 菊田一夫『君の名は』における「東京」
3 「三等重役、バンザイ!」 – 源氏鶏太『三等重役』論
第5章 家庭と組合のはざまで – 銀行の労組活動と文化運動
1 「家庭」からの逃亡、あるいは「個」への志向
2 「ひろば」に集まる銀行員たち – 銀行員の労働組合文化運動
3 ホワイトカラーは青空を謳う – 『銀行員の詩集』試論
終 章 漂泊への決別、あるいは「平凡なサラリーマン」として生きることの覚悟
– 山口瞳『江分利満氏の優雅な生活』論
1 江分利満氏の論じにくさ – 問題設定に代えて
2 江分利満のプロフィール – 「恥」の感情を中心に
3 「オヤコサンニン」のマイホーム – 1962年の「江分利満」たち
4 「バイア・コン・ディオス」とともに去ったもの
5 さよなら、〈サラリーマン〉 – 結論に代えて
あとがき