傷痍軍人と文学の日本近代
[2024年9月/四六判/282頁/]
著=市川 遥
発行=青弓社
目次:
はじめに
序 章 「傷痍軍人」とは誰か
1 傷痍軍人に関する先行研究概観
2 文学のなかの傷痍軍人表象
3 傷痍軍人の傷と時間
第1部 忘れられた傷-「傷痍軍人」前史と文学
第1章 文学が描いた傷と戦争へのまなざし
-日清戦争後の負傷兵言説と山田美妙「負傷兵」
1 日清戦争の負傷兵
2 文学のなかの負傷兵
3 「負傷兵」が描いたもの
4 「負傷兵」の位置づけ
第2章 「癈兵小説群」を立ち上げる-江口渙「中尉と癈兵」を中心に
1 癈兵小説の特徴とその展開
2 「中尉と癈兵」のなかの癈兵表象
3 身体感覚と描かれる「揺らぎ」
第3章 「幻」が描く悲劇と抵抗-江戸川乱歩「芋虫」をめぐって
1 過剰な「称揚」
2 奪われた「声」
3 芋虫の「幻」
第2部 集められる傷-戦時下の傷痍軍人表象
第4章 大衆作家たちの「潤色執筆」
-『傷痍軍人成功美談集』の成立と「再起奉公」言説をめぐって
1 成功美談とは何か
2 「再起奉公」とその裏側
3 『美談集』成立とその背景
4 「潤色執筆」をめぐって
第5章 「傷」を描くということ
-1940年前後の軍人援護強化キャンペーンと傷痍軍人表象をめぐって
1 「強化キャンペーン」と子どもたち
2 童話による傷痍軍人との出会い
3 『軍人援護文芸作品集』をめぐって
4 英雄視を拒む語り
第3部 重なる傷-戦後の語りをめぐって
第6章 傷つけられる兵士たち-文学のなかの兵役忌避の物語から
1 疾病作為という手段とその結末
2 私的制裁と兵士たちの身体
3 書く行為の明示と「集団」のなかの忌避者
第7章 戦争の経験を引きずる
-井伏鱒二「遥拝隊長」と傷痍軍人表象からみる戦後
1 同時代の傷痍軍人イメージ
2 「気違ひ」と〈未復員〉
3 負傷する足と「びつこ」
4 「びつこ」と引きずる足
第8章 「傷跡」と語りの変容-直井潔の作品とケアの様相をめぐって
1 作家・直井潔
2 依存とケアの文脈から
3 多様なケアをめぐって
4 戦争の傷跡を語り直す
終 章 「傷痍軍人」はどのように語られてきたのか
おわりに